…
バーサーク。
今更説明する必要も無いだろう。
剣を狂気に乗せて打ち出し、斬り払う。
それだけだ。
魔王の取り巻きが、俺の手で一体づつ解体されて行く。
最悪だな。
最後の最期でこれは最悪だな、という思考が沸く。
あぁそうかい。魔王も勇者も無力だと分かったらこのザマかい。
自動的に振るわれる己の正義を朱色の視野に収めながら、
狂気の向こうで辛うじて思考を紡ぐ。
俺は、何だって?
俺は一体、何だって?
あぁ?
この世界には魔王が居たんだ。
殺さなければならなかったんだ。
『そうすべきと信じて』、様々な犠牲を払って此処まで来たんだ。
なのに、こんな、こんな。
なんて酷い仕打ちだ。
畜生。
そうか?そうか。
混沌の内で一つの答えを見付け、
言葉にならぬ内のそれを俺は我武者羅に喰らった。
次の瞬間には、俺の剣は賢者の胴を薙いでいた。
バーサークが、解けた。
賢者は言った。
お前はどこまでも勇者なのだな、と。
あぁ。
そう言うお前もどこまでも賢者だな。
魔王は殺すべきなんだろう?
斬れなかったのだ。
どうしても俺には、この子供の首を落とす事が出来なかったのだ。
その瞬間、『俺の』善悪は逆転して。